映画『60歳のラブレター』『白夜行』『神様のカルテ』など数々の話題作を手がけたNCW OBである深川栄洋監督をお迎えし、特別トークライブを開催いたしました!
最新作『あなたの息子ひき出します』の制作秘話から、社会的なテーマへの向き合い方、自主映画として制作するに至った経緯や葛藤、そして宣伝チームの立ち上げや観客に届けるプロモーションの舞台裏まで、深川監督のお話を伺いました。
🎬 前半:作品の立ち上げ〜10年の構想と現代の“ヒーロー映画”へ〜
自主映画のルーツと「OB/OG宣伝チーム」の原体験
トークは、深川監督のキャリアの原点であるNCW在籍時のエピソードから始まりました。20代前半の頃、PFFに入選するも賞を逃した悔しさから、映画館(旧:BOX東中野/現:ポレポレ東中野)でレイトショー公開を取り付けた経験を振り返ります。その際、NCWのみせるコースのOB/OGに声をかけて自主宣伝チームを結成。泥臭く手探りの宣伝活動を行った結果、同時期に公開された話題作の中で最も集客を記録し、それが後の商業デビュー作『狼少女』へ繋がったという原体験が明かされました。

企画のきっかけと10年の探求
商業作品を数多く手がけてきた深川監督が、本作を自主映画として立ち上げた背景には、約10年前からのテーマに深い関心がありました。「ひきこもり」という言葉が創出され、メディアや社会で言葉が独り歩きしていく様子を長年ウォッチングし続けていたと言います。社会が認識していながらも、解決になかなか至らない問題にあえてスポットを当て、映画という表現を通してどう向き合うかを模索し続けてきました。
「無謬性」の社会と、間違えるヒーロー
監督は、現代社会で「無謬性(間違えないこと)」が重視されすぎている現状に危機感を覚えると言います。過去の事例に囚われ、失敗を恐れる仕組みが蔓延した結果、社会からこぼれ落ちた人々が孤立を深めていく——。その窮屈さを打ち破る存在として描いたのが、悩みながらも間違いを恐れず葛藤し続ける主人公の姿でした。「特別な力を持たない普通の中年女性こそが現代のヒーローである」。そう語る監督の眼差しが、作品の骨格を形作っています。

📣 後半:宣伝チームの立ち上げ〜観客に届けるプロモーションの舞台裏〜
宣伝部の結成とプレスキットに込めた想い
後半では、宣伝チームメンバーの土屋さん(NCW OB/OG)も登壇し、自主配給・自主宣伝のリアルな試みが紹介されました。今年2月、NCWのOB/OGに呼びかけて発足した「宣伝部」は、各自ができる範囲で無理なく関わるユニークな体制でスタート。プレス向けに制作されたプレスキットには、作品解説だけでなく、宣伝チーム一人ひとりの「考察」や社会学者のコメントが盛り込まれました。
特に、出演者である天海祐希さんから寄せられた言葉について、深川監督は「『複雑な問題に目をそらさず、知ること、考えること、小さくでも行動すること。それが私たちにできること』という天海さんのコメントこそが、まさにこの映画の本質を鮮やかに言い表してくれた。映画が形作られる瞬間に立ち会えたような感動があった」と語り、表現者同士の共鳴が明かされました。

宣伝の挑戦とインバウンド向け施策のリアル
主要劇場であるシネスイッチ銀座周辺に多くの外国人観光客がいることに着目し、インバウンド層を取り込むために全英文チラシの作成やポスティング、英語字幕上映などを企画。しかし実際には時間や体制が追いつかず、目標通りに掘り起こしきれなかったという悔しい反省点も明かされました。理想を掲げながらも現実の壁にぶつかり、手探りで模索し続ける自主配給・自主宣伝のリアルな舞台裏が浮き彫りとなりました。
🤝 最後に…
「映画は答えを与えるものではなく、観客に『傷』や疑問を残し、考えさせるためのもの」。社会の歪みや声なき声に向き合い続ける深川監督の姿勢は、クリエイターや映画づくりを志す参加者にとって大きな刺激と学びとなりました。
深川栄洋監督、登壇者の皆様、そしてご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました!
🎬 作品情報
シネスイッチ銀座ほか全国順次公開中
-726x1024.jpg)
監督プロフィール
監督:深川栄洋(ふかがわ よしひろ)
1976年、千葉県生まれ。2005年に『狼少女』で劇場用長編映画監督デビュー。
【主な監督作】 『60歳のラブレター』(09)、『白夜行』(11)、『神様のカルテ』(11)、『トワイライト ささらさや』(14)、『そらのレストラン』(19)、『桜のような僕の恋人』(22)、『法廷遊戯』(23)。また、テレビドラマでは『破獄』(17)、『手紙』(18)、『にじいろカルテ』(21)、『誘拐の日』(25)、『再会Silent Truth』(26)など数多くの話題作を手がけている。



